2011年05月16日

【映画レビュー】川の底からこんにちわ 〜お金を払ってでも見たい「ザ・女優」〜

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もう前々から、絶賛しまくっている若手女優、満島ひかり。
基本的にこの女優だから見る、なんて女優縛りで映画を見ることはないですが、
この人の出てる映画は「満島ひかりが出てる」ってだけで、プラスになる。
それくらい称賛していますよ、私は。

んで、石井裕也監督の初の商業映画デビュー作。
なんと石井裕也監督は、この映画をきっかけに(?)、満島ひかりと
結婚しちゃったのだから、ホントにうらやましい。

そんな二人の馴れ初めの映画です。

ストーリーは、

上京して5年、仕事は5つ目、彼氏は5人目。妥協と惰性で毎日を送る佐和子に、父親が病に倒れ余命わずかとの報せが入った。ひとり娘の佐和子は実家の“しじみ工場”を継ぐため、5年ぶりに故郷の水辺の町に帰るが、くせ者のオバちゃん揃いの工場は倒産寸前、火の車。追い込まれた佐和子は、オバちゃんたちのパワーを借りて、初めて人生に立ち向かう。





うん、めっちゃおもしろかった。
かなり良かったよ。
やたらやりすぎ感あるのに、嘘っぽくない。
何よりもセリフがいちいち良い。

とにかくこの映画は
「どうせみんな“中の下”ですよね。しょうがないから、がんばるしかないっしょ」
というセリフを生み出した時点でもう勝ちですね。
ここまで気持ちよく開き直れる映画もないよねー。

この映画に出てくる人はみんな、しょーもない「中の下」な人達。
しじみ工場の社長の父、役場でつとめる酒癖の悪い叔父、
一癖も二癖もある工場のオバハン、ダメ男の彼氏、
ビッチな幼馴染…
もうきりがない。
子供にまで満島ひかりは
「あんただって中の下なんだから、がんばるだよ」と言い放つ。


でも、開き直った時のみんなの顔はとても気持ちいい顔してる。
希望を持たせて「がんばろう」というのもありだが、
「どうせすでにダメなんだから、開き直ってがんばるしかない」
というのもありだなぁ〜って。

やたらシュールな展開の中に、開き直りまくる。
明るい逆ギレ的な、痛快すぎます。

というか、満島ひかりの、ブチ切れた演技が最高です。
日本の若手女優でここまでやりきれる人って少ないよねぇ…

こない映画好きの美容師さんと話をしていて、
彼女いわく
「最近の日本の映画はつまらない…。
男の子の俳優は、結構イキのいいのが出てるけど、
若手女優は中途半端で、昔の女優みたいにザ・女優な人
思いつかないよねぇ」
と言っていました。
でも
「満島ひかりだけは、別な感じがするね」と言ってました。

ザ・女優な人ってもっとアクが強くて、
エゴがあって、画面からビシビシと尖がったオーラを
感じると思うんですが、
綾瀬はるかや、戸田恵梨香とか、ガッキーとか…
あんまりそういう「ザ・女優」なパワーを感じないんだよねぇ…
蒼井優とか、宮崎あおいも良いけどエグさがないし…
その美容師さんいわく
「沢尻エリカとかさ、とんがってるけど、昔の女優とか
あれぐらい尖がってたと思うんだよね。そういう意味で
ザ・女優だよねぇ」って。同感です。


で、満島ひかりですが、
エゴな人だとは思わないけど、
演技のためになりふり構わない狂気すら感じる点で
「ザ・女優」な感じがするんだよね。
まだ若いけど、30代後半とかになったら、どんなぶっ飛んだ演技が出てくるんだろう
って期待感がある。
尖がったインディーズとか似合う。
お金を払ってみる価値がある稀有な女優だと思います。

映画もかなり良いのでおススメ。
久し振りに邦画で突き抜けたのに出会ったなぁ〜。





オバハンもかっこいい。
posted by 107gou at 16:42| クアラルンプール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 107号室的映画レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月11日

【映画レビュー】ザ・バンク 堕ちた巨像 〜大人の渋いアクション&サスペンス〜


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さてと金融危機やらで大騒ぎだった2009年頃に公開されていたこの映画。
公開時は、やっぱこういう映画出たかーなんて思って気にはなっていたけど、
主演クライブ・オーウェンのなんか地味な感じとかで、いまいちこうヒキがない感じで
今日までスルーし続けてしまいました(ごめんクライブ・オーウェン)

実際に存在した悪徳銀行がモデルの映画らしいです。
ストーリーは、

世界の富裕層から莫大な資金が集まる、欧州を代表する巨大銀行IBBC。
しかし、その取引には、ある違法行為の疑いが・・・。
ニューヨークの検事局のエレノア・ホイットマンと共同で捜査に乗り出した、インターポール捜査官のルイ・サリンジャー。
ベルリン、リヨン、ルクセンブルク、ミラノ、ニューヨーク、そしてイスタンブールへ。
次々と消されていく証人や証拠に翻弄されながら、彼らの追跡は国境を越えていく。
世界屈指のその銀行の資金は、いったい何処から流れているのか。
核心に近づくたび断ち切られる、真相解明の糸口。
サリンジャーは、強大な権力をまとったメガバンクに、一人で立ち向かう決意をする。
そして、真実を暴くため、彼は法の粋さえ越えようとしていたー。



とにかく「なんか地味」(笑)。
いや別に映像も普通にかっこいいし、演技も全く悪くないんだけど、
ハリウッドの大作のわりには、「華がない」(爆)。

でも逆に考えると、それでいいんじゃないか、
「普通の良い映画」なんじゃないか、と思える。

映像的には、ドイツはじめ、イタリア、NY、イスタンブルなど
世界の各都市を舞台にするので、その都市の風景や建物のかっこよさなどは
結構、一見の価値ありです。
これスタジオじゃないよね?世界ロケだとしたら結構な大作だと思う。

でも…
クライヴ・オーウェンとナオミ・ワッツのコンビが地味だ…(笑)。
ハリウッド映画の王道的には、やっぱり主演の2人は恋に落ちちゃったりとかするのかな〜
とか見ていても、全くそんな気配すらなし。
懐かしのXファイルのモルダー&スカリーみたいだ。

この地味さって、なんだろう?って思ったら、
「大人」なんだって思った。

普通に巨大な敵と戦っている時に、
ラブシーンなんてないし、警察組織や法律など現実の壁にもぶち当たるし、
そう簡単に物事は進まないよなぁ〜っていちいち、生々しくリアル。
主演の2人も「大人の俳優」
無理な設定で盛り上げようとかしない。

普通にやったらつまんない映画になりそうなのに、
ちゃんとエンターテインメントとして成立しているから、
ハリウッドってところは、すごい。

カメラワークの切り返しや、映像の画角などちゃんとしてるし。
演技もまったく安心してみていられる。

ただこの映画の一番いいところは、ラストシーンかな〜。
このオチは好きですね。
エンドロールまで見て、本当の結末がわかるとこもGOOD。

確かに、現実の世の中は、大概そういう結末になるよねー、と
「映画的な結末」に落ちなかったのは好評価です。

一見、フックがなくてスルーしちゃいそうな映画にも良作はあって、
もったいないなーって思う(決して最高傑作じゃなくてもね)

地味な良作もちゃんと掘り出して、紹介しなきゃなーって思った次第であります。


余談ですが、ナオミ・ワッツは相変わらず美女でした…
でも老けたなー(当たり前か)。




ナオミ・ワッツはおばあちゃん女優になっても活躍しそう
posted by 107gou at 09:59| クアラルンプール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 107号室的映画レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月08日

【映画レビュー】英国王のスピーチ 〜ニクいくらい王道〜

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さって、たまには新作公開中映画だってレビューします。
アカデミー賞を受賞し、話題の実話のドラマ。
現在のイギリス女王であるエリザベス女王の父であるジョージ6世の実話の話を映画化したもので、
英国王室もゴーサインを出して協力しているらしい?です。
主演は最近、ノリにのっているコリンファース。
そして脇役両サイドのには、脇役で「まず間違いない」俳優である
ジェフリーラッシュと、ヘレム・ボナム・カーターという実力派トリオに、
さりげなくガイ・ピアースもいます。

ストーリーは、
英国王ジョージ5世の次男ジョージ6世は、幼い頃から吃音というコンプレックスを抱え、人前に出ることを極端に恐れる内向的な性格となり、成人してからも自分を否定し続ける人生を送っていた。吃音を克服すべく、何人もの言語聴覚士の治療を受けるものの一向に改善の兆しは見られない。そんな夫を心配する妻エリザベスが最後に頼ったのはスピーチ矯正の専門家というオーストラリア人のライオネル。彼は王子に対しても遠慮のない物言いで次々と風変わりな治療法を実践していく。そんな中、国王に即位した兄エドワード8世が、王室が認めない女性との愛を貫き、突如王位を返上してしまう。王位の継承など考えてもいなかったジョージは、最も恐れていた事態に直面し、恐怖のあまり泣き崩れてしまうが…



いやーよくできています。3DやCG、原作リメイクなどが横行するハリウッド映画において、
余計なものをいっさい排除し、良い脚本、良い演技、ちゃんとした時代考証、世界観に入り込めるプロダクションデザインなど、
映画の基本をきちっと作った、意外とイマドキめずらしい王道のクラシックなスタイルの映画です。
と言っても、別に古くさい感じはなく、きっと10年〜20年時が経っても、ビデオ屋さんでプッシュされて、
見られる映画だろうなって思いました。


この前の映画「マンモス 世界最大のSNSを作った男」のレビューで
見ている人との共感の接点の話をしたので、ちょうどこれはいい対比なんですが、
この映画はその点非常にうまくできている。

基本的な物語の柱は、ジョージの吃りです。
しかし、その「吃り」という困ったことを中心にして、
色々な人の人間性が見える物語が広がっていくのがすばらしいところ。

あんまり言うと映画をまだ見てない人が色眼鏡で見ちゃうから、ほどほどにしますが、
例えばジョージ。
吃りは生まれつきじゃなくて、後天的なものです。
それは彼の育てられ方に原因がある。
吃りの背景には、愛情に飢えたまま成人した哀しい男の心の中が見える。

ジョージと吃りの治療に取り組むライオネル。
医者みたいな仕事をしながらも、実はシェークスピアの演劇俳優を目指して、
オーディションを受けてはダメだしをされ続けるダメ俳優だったのだ。
彼は、自分の叶わない夢を、ジョージという英国王に託す。

ジョージの妻でのちの王妃であるエリザベス。
ちょっと勝ち気で、夫を支える妻だが、
実は王室のしきたりなんかが嫌でプロポーズを三回断っていた。
でも彼女は吃りを持つ夫を見て、ある意味「王室のしきたりの犠牲者」
である夫を支えることを決めて、最後までそれを貫く。
そして彼女自身が正しい「王室のしきたりや権威」を守ろうとする。


物語はジョージとライオネルの信頼と友情が軸になっている。
戴冠式の練習をするジョージとライオネルは、
まるでライオネルが願ってもかなわなかった、
シェークスピアの最高の演劇の舞台のよう。
ジョージはライオネルに出会ったおかげで最高の国王になれたし、
ライオネルはジョージに出会ったおかげで、
演劇俳優としてではなく、ジョージの良き友として
演劇の舞台以上の最高の舞台に立つことができた。

それがまた感動を呼ぶのだす。
物語って、画面の表で見えているストーリーと
その裏にある画面に映っていない
人の気持ちや移り変わりの表裏が一緒にシンクロして
初めて感動を呼ぶんだなぁって思った。

なんというか映画って、
画面に映し出されたストーリーと
見ている人の頭の中で解釈されるストーリーの両方を持っていることが必要だねってこと。
その点これは超秀逸。
小難しくなく、時にユーモアある感じで見せている。
そりゃアカデミー賞に好かれそうな感じだわー


俳優陣は言うまでもないって感じです。
コリン・ファース。最近売れてますね、映画「シングルマン」もそうですが。
ただややワンパターンな気もするのが気になる。
演技の触れ幅が増えると名優になるよなー。

あとバッキンガム宮殿の中など、英国の王室の生活などの再現が
ほぼ100%忠実らしいです。よくできているらしい。
この点、やっぱり英国王室も協力なのかなー。




ウイリアム王子も期待だね。

posted by 107gou at 14:11| クアラルンプール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 107号室的映画レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【映画レビュー】マンモス 史上最大のSNSを作った男 〜ソーシャルネットワークとは無関係〜

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そういやレビュー忘れてたこの作品。
「史上最大のSNSを作った男」というタイトルに、
パッケージを見ればわかるけど、
明らかに映画「ソーシャルネットワーク」を意識しまくっている。
「出たー便乗映画!」とか思うんだけど、
そんな映画に
「わりと出演作をちゃんと選んでる風」な
ガエル・ベルナル・ガルシアが出るだろうか!?
そしてなにげにガエル君の妻役に
「気がついたら、演技派中堅脇役女優」な、ミシェル・ウイリアムスが出ている…
なにげに監督はスウェーデン人。
アメリカの映画じゃないのね。

というわけでストーリーを

億万長者になっても得られないものがある――。
人気ウェブサイトの創始者レオと救命医のエレンは、7歳の可愛い娘と共にニューヨークの高級マンションに住み、何不自由無い生活を送っていた。しかし、レオとエレンの仕事は多忙を極め、娘は家政婦に任せっきり。仕事をして生活が豊かになればなるほど娘との関係は希薄になっていった。ある日、レオはアジア屈指の有力企業から投資を受けるため側近ボブと共にバンコクへ飛び立つことになる。しかし、ボブは現地に着くと「交渉は任せてサインだけして欲しい」と言い放ち、別行動を提案する。プログラマーとしての才能はあっても経営者としての手腕を発揮できず、腐るほど金があっても家族に愛情を注ぐことのできないレオの人生は、タイで出会ったある女性によって思いも寄らない方向へ動き出す…。


うーんこれは邦題で損をしているのか、得をしているのか…
まず「ソーシャルネットワーク」的なものを期待してみると、完璧に肩すかしを食らいます。
この映画は、ベンチャービジネスの成功物語とかの類いじゃなくて、
家族の絆や、豊かな国と貧しい国の問題など、を描いたヒューマンな映画です。

まず先に褒めると、映像がとても奇麗ですね。よく撮れている。
なんかストーリーはアメリカっぽいんだけど、映像がヨーロッパ人の監督らしい
ちょっとクールでヒンヤリしたスタイリッシュな感じがかっこいい。

主人公はSNSサイトの社長であるレオ一家なんだけど、
その家で住み込みで働くフィリピン人メイドのグロリアや、
レオがタイで出会う娼婦の女性や、レオの妻で救命医のエレンの患者の男の子などにも
フォーカスされたりして、ちょっとした群像劇風に作られている。

なんとなーくなんだけど、世界中各国でそれぞれが幸せを考える姿が映画「バベル」を連想させた。
しかしあれのような重さが無い…なぜか…

はっきり言って、主人公の設定がまずいのだ。
レオは人気SNSで成功して超リッチな成功者。
そんな人が善良そうに、家庭派になったりしてもいまいち
見ている方は現実感がない。
ガエルがどうしても普通の人に見えるのだ。健やかすぎる。

巨大な成功をおさめた人間として、もっと病んでいたりしててもおかしくないのに、
すごくまともで、なんだか本当に家族の絆の大切さを見ている側にぐっと訴えてこない。
社会的成功をおさめた上に、まだ家族との時間も欲しい。
でも別に家族間は不仲なんじゃなくて、両親が忙しくて、単に時間が無いだけにしか見えない。
そんな家庭はいっぱいある。みんな努力しているし、うまくやってる家庭もいっぱいあるし、
もっと悲惨な家庭だってある。
わざわざ映画で「やっぱり家族って大事よね」って訴えられても
「君らの努力不足だろう」って心の中で突っ込んでしまう。

もっとも、これはガエルのせいじゃなくて、脚本の設定のせいな気がする。

むしろ、住み込みメイドのグロリアの物語のほうが、ずっと泣ける。
確かに、お母さんが遠く離れた国でずっと帰って来れなくて、
長男は幼い弟から毎日「お母さんはいつ帰ってくるの」と聴かれ続け、
でも弟の前では、気丈にふるまうけど、彼だってまだ子供。
お母さんに電話したときは胸がつまって泣き出してしまう。
そういうのって、やっぱり想像できるぐっとくるじゃない。

こういう映画でヒューマンなものに訴えかけるときって、
見ている大衆が自分と置き換えて、共感できるポイントを
きちんと作っておかないと、せっかくのストーリーも
いまいち鈍い伝わり方をするねって言う例。

いっこいっこのネタはすごくいいんだけど、
家族の絆か、グローバリゼーションか…
ちょっと主題がボケ気味なのがつらいかも。

映像も奇麗で、俳優達の演技も悪くない。ストーリーだって決して悪いテーマじゃない。
だけど、心にぐっと響かないのは、色んな人が出てくるわりに、
個々の人物描写が中途半端なので、共感の接点が中途半端だからなんだろう。
結局、良い映画というのに、登場人物の描写の深さ&共感の接点をきちんと作っておくことは
欠かせないなぁという映画です。


ガエルは相変わらず子犬系な感じです。
なんかイケメンすぎて、悪の匂いが無いのがもったいない俳優だよねー。
若かりし頃のトムクルーズみたいに、汚れ役ができない感じ。

ミシェル・ウイリアムスも気がついたらしっかり色んな映画に出演を重ねてますね。
昔「ドーソンズクリーク」という青春ドラマでは、主人公のあこがれの美少女みたいな
役回りだったんですが、
気がつけば、お母さん役とかやっていて、ちょっと中堅どころになってきました。
演技力もあるので、このまま年取ったら、泉ピン子みたいなポジションになりそう(笑)(失礼)

あとタイでレオが出会う娼婦役の女の子はスタイル抜群、激しくかわいいです。
レオと海で遊ぶシーンとか必見です。セクシーです。
ハンパねー。タイに行きたくなった(違)



邦題で釣るべきか、正しいタイトルにすべきか。
posted by 107gou at 13:42| クアラルンプール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 107号室的映画レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月04日

【映画レビュー】メイド・イン・ホンコン 〜香港人は中国人じゃない〜


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さて、はたまたしつこく監督縛りで、フルーツ・チャン監督特集第三弾。
もうちょっとしたファンですね。いい加減にしろと。
香港の普通に生きる人の目線で、リアルに描く彼の作風。
フルーツ・チャンがマイブームなのか、単に香港そのものが
マイブームなのか全くよくわからんですが、
この1997年、香港返還前夜に公開されたこの映画。
低予算で撮影され、香港の当時の若者に絶大な支持を受け、ヒットしたそう。
サム・リーという香港が誇る若手人気俳優のデビューと、
フルーツチャン監督の出世作です。

この「香港返還」というタイミングがこの映画で非常に重要な
キーになってきます。

そのストーリーです
97年、中国返還を目前に控えた香港。母と二人で低所得者用アパートに住む少年チャウは、弟分のロンを引き連れ借金の取り立ての手伝いをしている。ある日、チャウは同じような境遇の少女ペンと出会い恋をする。が、彼女は重い腎臓病に冒されていた。やがて彼女の身を守るため、生まれて初めて銃を手にするが……。



いやーめちゃんこ良いな〜この映画。
この映画でもフルーツチャン監督お得意の比喩は健在です。

まずこの映画を理解する上で頭に入れておいたほうが、絶対楽しめるのが時代背景。
どうやらこの映画が発表された頃、香港はイギリスから中国への返還を控えていました。
中国圏の国とは言え、1世紀に渡り、イギリスという先進国の文化で育ち、自由資本主義の恩恵を受けて、
豊かな都市国家を築き上げた香港にとって、
共産党独裁な中国への返還はものすごく不安があったみたいなんですね。
もちろん政府とかは「やっと返還された!」なんて盛り上げてますが、
香港人にとっては、中国本土ってある種の敵対意識もちょっと混ざった存在らしいんです。
(その辺の感情は今でもあるらしく、香港人は、自分たちを中国人ではなく香港人だと認識している…らしい)

中国という国の中になって「これから今までの暮らしや国はどうなるんだろう」という雰囲気の中、
生き急ぐ若者たちを描いています。
(お、今日は、なんだか賢そうな映画レビューになってるぞ)

自分的にはある種、香港版トレインスポッティングなんじゃないかなぁ、なんて
ふと思いました(公開時期もちょうどかぶるし)

トレスポが、イギリスの若者の倦怠感や不安感を描いたものに対し、
この「メイド・イン・ホンコン」も痛切に香港の若者の不安な気持ちを描いているな、と。

どの映画レビューも言及していな解釈なのですが、
映画の中に「時代は君たち、若者のモノだって言うけど、大人達は都合が悪くなると逃げる」
みたいな一説があるんですね。

これって
若者=香港
大人=中国やイギリス
という構図にも考えられる。
逃げていった大人=イギリスと、取り残された不安感を持つ若者=香港。
たとえ中国という「大人」に飲み込まれても、俺たちは「若者」で、
香港で生まれた、というアイデンティティ、若者というアイデンティティは不変なんだよ!という
意志みたいなものを感じる。
だから映画のタイトルも「メイド・イン・ホンコン」(原題:香港製造)というタイトルなのかなって。


映画の展開は結構スタイリッシュかつスピード感あるので、非常に見ていて軽快です。
90年代の青春映画ってこういう疾走感みたいのがある映画多いよね。
あとはやはりサム・リーは外せない。存在感が抜群です。
決してイケメン系じゃないんですが、雰囲気がかっこいい。

で、彼を見ていてふと気がついたんですが、
フルーツ・チャンってさゲイじゃねーの?って思うくらい
男性の描き方に独特な美意識があるなって思った。
彼の映画に出てくる男性はみんな痩せていて、でも引き締まった体をしている。
今で言う「細マッチョ」が多い。
で、女性はちょっと妖艶で小悪魔な一面を持つ子が多い気がする。
この描き方ってゲイの監督で有名な、フランスのフランソワ・オゾンに似ているんだよなぁ。
すごく個人的な異説ですが、どうなんでしょうね。

まぁとにかく何かと興味深い作風をもつ監督ですね。
この映画は今見てもかっこいいぞえ。
香港好きは必見。




香港のマンションの間取りが日本人には衝撃的(笑)
posted by 107gou at 23:16| クアラルンプール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 107号室的映画レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月01日

【映画レビュー】ドリアン ドリアン 〜強烈に匂うものほど、甘く美しいらしい〜

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さーて、またいつものことなんですが、
基本的に映画は「監督」縛りで見るワタシ。
映画に限らず、音楽もプロデューサー縛りとかで聴いたりとか、
クリエイターの作家性に惹かれてしまうのです
(もっともそんな中で、「きゃーかわいすぎる」という女優/美人歌手縛りもたまにある)

で、先日
「ハリウッドホンコン」もレビューでレビューしましたフルーツ・チャン監督縛り。
香港旅行以来、香港的な空気感をもっと味わいたい旅の逃避願望なんでしょうか…

そんなオイラの思惑はともかく、
ストーリーを

中国大陸北部出身のイェンは、南方へ出稼ぎに行くと称して香港への就労ビザを取得し、歓楽街で体を売って稼いでいる。同じ路地では毎日幼い姉弟が皿洗いをする。彼らもまた、お金のために不法滞在する本土からの出稼ぎ労働者だ。ビザの期限が切れ、イェンは大金とともに故郷へ帰ってきた。体を売ってまで稼いだ金を何に使うべきか迷うイェンに、何も知らない従妹は一緒に南方へ行きたいとせがむ。そんな時、路地裏の少女から思いがけない荷物が届く




これ、ぼーっと見てたんですが、実に良い映画であることが、
後からじわじわわかってきましたよー。

フルーツチャン監督って、フルーツなんて名前がついているからなのか、
映画にフルーツをモチーフに使うことが多いらしい。
この映画ではそれが「ドリアン」。

果物の王様なんて言われているらしい東南アジアの果物なんですが、
超強烈な匂いを放つ。例えるなら「靴下の匂い」「おしっこの匂い」とか…
うーん食欲失せるな…
でも、匂いを我慢して口に運ぶとなんとも甘く、おいしい果物らしい。
(ワタシも食べたことはない)

このドリアンがこの映画の中で非常に重要なキーになっている。
貧しい中国北部(たぶん内モンゴルに近い、ハルピン市とかあっちのほう)の人にとって、
深圳や香港の南方は、暖かく、都会的で豊かなパラダイスだと思っている。
しかし、主人公のイエンは、香港で小汚い狭いアパートで、ジャンクなテイクアウトの中華料理を
むさぼり食いながら、ヘルス譲として客を取って、ガンガン働いている。
ストリートなタフな女かと思いきや、地元では京劇をずっと習っていた普通のまともな女の子。
地元の人も、まさかイエンが風俗で大金を稼いだなんて思っていない。
店とアパートの往復で、路地裏しか香港を知らない。
でもイエンには夢もあるし、香港で風俗で働いてまでお金を稼いだのには理由がある。

同じように裏通りで皿洗いを続けている少女の一家も、
貧しくて、同じように香港で不法滞在を続けているが
ちっとも香港のことは知らない狭い世界で生きている。
でも、彼女なりにイエンに憧れたり、小さな幸せを見つけて生きている。

ほかにも、イエンを送り迎えするチンピラや、路地裏で働く人々、
同じように何かのためにお金を稼ぎにきた風俗譲たち、などなど
色んな人々が出てくる。

そんなカオスな香港の街で、パワフルにけなげに生きる人々を、
ドリアンに例えているような演出に、
フルーツチャン監督の、
香港で生きる普通の人々への愛情がすごく感じられるのだよ。

イエンは地元に帰って、
南方から送られてきたドリアンを、
地元の友人や家族に食べてみ、とすすめる。
しかしみんな匂いに気味悪がって、誰も食べない。
その模様は、きっと香港でイエンがしてきたことを誰も理解してくれないであろう、
ことの暗喩な気がするし、
ラストシーンも強烈な皮肉だ。

わりと意味のなさそうな小汚い映像が、淡々と進むので、
「あれー駄作かな…」って一瞬不安になるのですが、
「このシーンは何を言いたいのかな」って意識してみると
とても味わい深い映画です。
台詞ではなく、シーンで観客に感じさせるのが良い。
それもまたドリアン的じゃないですか。

そんな中にも結構美しいシーンもあったりして、
何回見ても味わいがありそうな
とても良い映画だなーって思いました。

主演のチンハイルーは、映画初出演で
もとは京劇の方らしいです。
インタビュー映像とか見ると、実はめっちゃ美人です。
ほかの出演者はみんなアマチュアなんだって!!




ドリアンってどこで売ってんだ?
posted by 107gou at 19:32| クアラルンプール ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 107号室的映画レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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